
県外のルームツアー動画を見ていると
「断熱等級6」「断熱等級7」「UA値がどう」
といった言葉を目にする機会が増えてきました。
住宅性能が数値で“見える化”されてきたこと自体はとても良い流れだと思います。
一方で、
「等級が高くないといけないの?」
「沖縄でも県外と同じ基準で考えるべき?」
と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
今回は、沖縄で家を建てるなら知っておきたい
「断熱等級とは何か」と沖縄ならではの快適な家づくりのポイントを
分かりやすくお伝えします。
そもそも断熱等級とは?
断熱等級ができたのは、省エネ・脱炭素社会への移行、
光熱費削減、健康被害(ヒートショックなど)防止、
住宅の資産価値向上といった目的のためです。
地球温暖化対策でエネルギー消費削減が求められる中、快適性を保ちつつ
エネルギーを使わない家を実現するため、国土交通省が住宅の断熱性能を評価する基準として
2022年に新等級(5~7)を設け、2025年4月からは断熱等級4以上が義務化されます。
6等級、7等級という風に数字が大きいほど断熱性能が高い住宅とされています。
簡単に言えば、外の暑さ・寒さをどれだけ室内に伝えにくいか
を表す指標です。

この断熱性能を判断する際に使われる代表的な数値が「UA値」。
UA値は、家全体からどれくらい熱が出入りしやすいかを示し、
UA値の数値が小さいほど断熱性能が高い住宅となります。
沖縄は「8地域」──背景を知ることが大切です

日本は地域ごとに気候条件が大きく異なるため、
建築物省エネ法に基づき全国が「1地域〜8地域」に区分されています。

従来の断熱基準(断熱等級)は、主に寒冷地のヒートショック対策など
「冬の寒さから健康を守る」という視点で発展してきた背景があります。
そのため温暖な沖縄においては、断熱等級という数値を謳う文化が主流ではありませんでした。
ここで一つ、大切な事実があります。
実は沖縄(8地域)には「UA値(断熱)」の等級基準値が設定されていません。
しかし、近年の国の指針では、冬の防寒だけでなく**「夏の冷房効率を高めるための遮熱」や「CO2排出削減」**が重視されています。2025年4月からは、沖縄を含む全国で「断熱等級4以上(後述のηAC値)」の適合が義務化されました。

沖縄の住宅が目指すべきは単なる寒さ対策ではなく、
独自の気候風土に合わせた「日射遮蔽」と「高効率な遮熱」を組み合わせた性能向上です。
これまでの「風通しや日除け」という伝統的な知恵に、最新の省エネ基準を融合させることで
沖縄の暮らしはさらに進化しようとしています。
沖縄の住まいに求められる「断熱」と「日射遮蔽」のバランス

「沖縄では断熱が不要」というわけではありません。
しかし数値(等級)だけを追い求め、闇雲に断熱材を厚くすれば良いわけではありません。
・断熱: 外からの熱気を遮り、冷房効率を高める(魔法瓶の役割)。
・日射遮蔽(遮熱): 窓からの強烈な直射日光をカットする。
もし「日射遮蔽」が不十分なまま「断熱」だけを強めてしまうと、一度室内に入った熱が逃げ場を失い、夜になっても室温が下がらない「熱ごもり」の原因になります。沖縄の家づくりには、**「入れる熱を最小限にし、入った熱は逃がす」**という調和が不可欠なのです。
沖縄で注目したい「ηAC値(イータ・エー・シー値)」
そこで、沖縄の家づくりで、UA値以上にチェックしてほしいのが
“ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)”です。

ηAC値とは、夏の強い日差しがどれくらい室内に入り込むかを示す指標です。
これは「夏の太陽光がどれくらい室内に侵入するか」を示す指標です。数値が小さいほど、
室内が暑くなりにくい という「沖縄での快適さ」に直結します。
・日射をしっかり遮れている
・冷房が効きやすく、電気代が抑えられる
・室内が暑くなりにくい という「沖縄での快適さ」に直結します。

ηAC値を良くするための設計の工夫
特別な技術ではなく、丁寧な設計が数字を改善します。
例えば、
・軒や庇(ひさし)をしっかり設け、高い位置からの日差しを遮る
・窓の位置や大きさを考える
・遮熱性能の高いガラスを選ぶ
・西日が当たる壁を厚くする、または窓を最小限にする
→内部を打ちっぱなしにする住宅設計の場合でも、西面はしっかり壁を作りクロスを張るように心がけることもポイントとなります。
こうした設計の積み重ねが、沖縄ではとても大きな意味を持ちます。
数値だけを見るのではなく、敷地条件、方位、風の通り道、
暮らし方まで含めて考えること。それが沖縄らしい家づくりにつながります。
数字は「目的」ではなく、心地よさのための「手段」
断熱等級も、UA値も、ηAC値も、本来は快適に暮らすための指標です。
数字が高いから良い家、数値が低いから正解、という単純な話ではありません。
特に沖縄では、
・気候
・生活スタイル
・冷房との付き合い方
を踏まえた、バランスの取れた設計が大切です。
沖縄の気候に合った家づくりを
家づくりは一生に一度の大きな選択。だからこそ「流行っているから」「数字が高いから」ではなく、
自分たちが暮らす沖縄の気候に本当に合っているかを大切にしてほしいと思います。
断熱等級は大切。でもこだわり”過ぎ”なくてもいい。
その代わり沖縄では日射対策(ηAC値)を意識することが快適な住まいへの近道です。
このコラムが「断熱等級って何?」という疑問をやさしく解消し、
沖縄らしい家づくりを考えるきっかけになれば幸いです。
参照:国土交通省「家選びの基準変わります」
参照:国土交通省「住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設」
参照:沖縄県「住宅性能表示制度(令和4年度改正(省エネルギー性能))」
